2017年5月24日

東京、雨上がりの夕晴れ - David Hidalgo & Marc Ribot Duo


© tsubakuro





久々の渋谷。
そのむかしここでとあるシンガーのMV撮ったなあ。フレームに写し思い出す。
お、パルコなくなってる。


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Los Lobosのデイヴィッド・ヒダルゴと、
あのマーク・リボーがデュオでライブ。

おおっ・・・!
これってもしや。

名盤にこの人の名前有り。
高校生の頃、John Zorn と彼の周辺の音楽にハマって、
氏のギターを知ったんじゃなかったかな。
フリーミュージック、ジャズから歌謡曲まで股にかけつつも、
その音像から放たれる空間は独特で、
抽象と常套を鋭利に刻み、繋げる。
遠雷のような、美しきギターワーク。

無調とブルーズをこれだけテイストフルに弾ける人は、彼しかいない。
そのひたむきさと隔てなさ、ブレない感受性。
誰かのアルバムで彼の名前を見つけると、
途端に聴いてみたくなるんだよね。
遂に、初ライブ体験。

Doc Pomus トリビュートアルバムでの「Lonely Avenue」。
あまりにカッコ良く、
遅まきながら狼たちにハマる。
実は相当オルタナな、実験精神バリバリの音を通過しつつのルーツミュージック。
振り子が大きく振れる分、シンプルなブルーズでも音空間が独特で、
これが土の景色を極彩色に鳴らす。
実験含め、どこかサザンオールスターズっぽいんだよね。
イイ声のヒダルゴさんと桑田さん、共にソウルフルなヴォーカルスタイルが最高。
ラテンルーツと歌謡ルーツ。
職人的筆致でもって、大胆なドローイングを美しく見せちゃうという、
鍛えられた音楽。
彼らのなかでもレイドバックした近作、車中ヘビロテ中。


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どんな風になるのかな。

個人的に、
リボーの制約の中での逸脱と、
ヒダルゴの攻めすぎないアメリカーナ風情、
その辺りが好みだったので、
この組み合わせって、
まさにそこを引き出し合う感じになりそうじゃん、大大大期待。
運良く最前列に座らせて貰え、こりゃ幸先イイゾ。

ライブは交互に選曲するスタイルで進む。
Hidalgoがおもむろにチェロ?を指弾きし、
Ribotは旅ギター?小ぶりなやつを、立体的にかき鳴らす。
大体どちらかがアコギのときは、他方はエレキで厚みを持たせる。
ボクは下手側、Ribot氏のプレイが眼前だったので、
彼のパンキッシュなボーカルとのめり込むギタープレイに圧倒。
こりゃ、写真撮りてえわな(笑)。
そして意外や、こんなに歌う人なのね。
Hidalgo氏は安定の歌声、同じくらい気持ち良く歌うギター。
極上の赤身肉食べてるかのよう、ザ・旨味。

どこまで決まっているのか分からない、開いた空気感。
しかしユルさは全くなし。
ニッティングファクトリーかどこかのアフターアワーズに、
運良く紛れ込んで、こっそり聴かせて貰えているかのよう。
静かに盛り上がる客席。
時折、皮肉っぽく笑うRibot氏。
泰然と、曲終わり毎に自然と笑顔で頷くHidalgo氏。
お互いの音を引き立て合いつつ、
お互いの主張を鋭く切り込ませる様に、おーっと唸る。
今やアメリカはあんなことになってるってのを、
滲ませる陰に対して、陽の提示も忘れない。

しかしMarc Ribot のギターって、
なんでこんなに気持ちイイんだろう。
録音を聴いて常々思っていたことが、
ライヴで裏切られるどころか、より確信してしまった。
雑多なエフェクター類と、ボロボロのフェンダージャガーが紡ぐ、
スペースのある響き。
ギター、とりわけエレキギターを操縦しきる、
クッキリ陰影のある、深い奥行き。
職人的な技術と尖り切った創造の感受性、
ここまで高いところで両方保ち得るには、
よっぽどの確信と、切実な不満、
安堵しない老獪な技術と、ヒリヒリした精神。
良い仕事を続けるってことは安定を担保してしまいがちだけど、
このギターは何だ。
若い頃聴いた彼の昔のアルバムより、遥かに成熟したプレイなのに、
尖り具合は全く不変。
あぁ気付かされた。そうだった。鮮明にしておかなくては・・・!!!


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2回のアンコール。
What's Going on、in the Midnight Hour と、
立て続けにゴキゲンなナンバーを披露。

余韻に浸るその足で渋谷の夜定食を頂き、
チャリにて、夜の淡島通り。


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願わくばこのデュオプロジェクト、アルバム化して欲しい。
ライヴとスタジオの2枚組とか?
その折にはジャケ写任せて(と誰ともなく言ってみる)





--- David Hidalgo 2選

この郊外感。
Town & The City / Los Lobos (2006)

ここで完全にハマる。
'Til The Night is Gone / V.A. (1995)


--- Marc Ribot 2選

先鋭と発酵の現在進行形。
Silent Movies / Marc Ribot (2010)

ここで完全にヤラれる。  R.I.P.鈴木清順
殺しのブルース / 巻上公一 (1992)